[∈]前田智徳


 

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前田智徳。

2013年10月3日に引退試合が行われた。

・落合博満をして「真似をしていいのは前田だけ」
・イチローをして「天才は前田さんですよ」

と言わしめ、周囲からは侍、武士などと書かれ、練習の鬼でもあると言われるプロ野球選手。

僕が彼のことについて初めて詳しく知ったのは、二宮清純氏の最強のプロ野球論 (講談社現代新書)という一冊の本であった。前田智徳という選手について、第1章の4項丸々が当てられていた。その他にクローズアップされていたのは、イチロー、そして巨人ファンであった僕のヒーロー松井秀喜であった。そこで彼は、「前田智徳は死にました」という言葉をインタビューの中で残す。

その意味は、右足アキレス腱を切ったことで選手生命の危機である、という意味ではなく、彼独自の野球に対する目的があり、それが達成できなくなったことを理解した。その目的とは、理想の打球を追求することだ。

野球はチームスポーツだ。バッティングは、チームの為に、チームの勝利のためにあるべきだ、と野球チームで教えられていた素直な?小学生の僕には、何だかこの選手は違うスポーツをやっているような感じがしたのを今でも憶えている。野球をしているのではなく、バッティングということをしているようだった。もっと言うと、登山や弓道のような酷く自己完結的な営みである。(事実、前田は「バッティングは好きですけど,野球は嫌いですね。守ることも走ることも好きじゃない。」という発言をしている)

そこで、そこまで言うのなら、前田のバッティングを見てみようと思い、TVで見たとき、なんと自然な、ムダのないスイングなんだろうと感激した覚えがある。何というか、ボールに対し力を込めたバットがその力を一切逃がさずに最短距離で芯を食う感じ、とにかくムダがなく、スイングが綺麗にV字を描く。そんな感覚を覚えたのは、前田だけだった(絶好調時の高橋由伸のフォームにも同じ感覚を見たことはあった)。アキレス腱を切る前の1級品の守備や走塁も生で見てみたかったなぁと思う。

もう彼のバッティングが見れないというのが、寂しい。
24年間のプロ野球人生で、2119安打、生涯打率 .302 、4000打数以上の歴代ランキングでも榎本喜八や王貞治よりも上の成績である。

怪我さえなければ、というのが誰もが思うことだが、僕は、前田にとって、怪我をしたことで得たものもあったと思う。前田智徳は死んだとしても、広島の前田として、本当の野球選手になったのではないか。晩年の前田は、チームを思う発言ばかりしていたし、最後の引退試合での挨拶を聴いていて、そう思った。チームが初めてのCS進出を決めたことも大きかったと思うが、野球選手として、最後は清々しい顔をしていた。

丸くなったわけではなく、彼の中での圧倒的な存在が消え、その結果野球というスポーツに向かえたとするのであれば、前田の表情も頷ける。最後のスピーチは、自分も涙してしまった。

また指導者として、ぜひ戻ってきてほしい。

新井宏昌がイチローを育てたように、前田智徳がきっと第2の前田智徳が連れてきてくれることを願っている。

 

 

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