[∈]2014年ブラジルW杯グループリーグ第3戦


 
 

ザッケローニは頭を抱えていた。

3-4-3。

指揮官の頭には、かつて自らが十八番としたフォーメーションが浮かんでいた。

2014年W杯、この試合に勝てばグループリーグを突破する、Cグループ第3戦。

相手は、イングランド。
Cグループは、アルゼンチン、イングランド、ナイジェリア、日本 で構成し、「死の組」とは言えないが、日本にとってグループリーグ突破を楽観視できるグループでは決してなかった。

第3戦目までに、アルゼンチンはFIFAランク2位の下馬評通り、初戦の日本、2戦目のイングランドを撃破し、2010年W杯において30本のシュートを打ちながら、無得点に終わったメッシが、「俺の大会」というばかりに、2試合で3ゴールを挙げていた。

残る1席を、日本、ナイジェリア、イングランドで争う形になった。

リードしているのは、イングランドである。2試合終わった時点で、ナイジェリアに対して挙げた勝ち点3が大きく、3戦目の日本に引き分け以上で、リーグ突破が決まる。反面、敗れたナイジェリアは、苦しかった。3戦目の絶好調アルゼンチンに勝たなければならず、1年前から継続しているお家騒動で選手と協会の溝が埋まらないまま、とてもチームと呼べる状況ではなかった。

日本はというと、初戦のアルゼンチン戦には3-0 と完敗し、事前の親善試合を経て安定してきたはずだった守備陣が崩壊した。
2戦目のナイジェリアに対して、ポゼッションを持ちつつもなかなか決め切れず、前半のロスタイムにはロングボール1本での個人技でのカウンターから1点を献上。さらに後半30分に吉田が突破を許したムバを遠藤が強引なファールで止め、1発レッドで退場。イエローカードかと思われた主審の笛は、日本の心臓をピッチの外に追いやった。しかし、終了間際に乾の強引な突破から得たFKを本田が蹴りこみ、GKが弾いたボールを岡崎が押し込んで1-1で分けた。

日本代表が首の皮一枚つながった東京の早朝は、新聞の号外を受け取ろうとするサラリーマンでにぎわった。

第3戦目、日本は勝利が絶対条件、イングランドは引き分けでも良い、という状況の中で、ベロオリゾンテでの試合を迎える。

そして、この重要な1戦に遠藤保仁を欠いて日本は戦わなければならなかった。東アジア杯とその後の親善試合でも、高橋秀人や柴崎岳といった若手を試したが、結局、23人の枠からザッケローニは外した。遠藤の代わりは見つからなかったのである。遠藤だけではなく、コンフェデ杯のレギュラーを凌ぐ若手は現れていなかった。ザッケローニが選んだ最終的な23人は、ほぼ1年前のコンフェデ杯メンバーと変わらなかった。唯一、伊野波に代わって入った槙野智章がムードメーカーとして元気だった。

ザッケローニは、細貝と長谷部のダブルボランチに賭け、自信を持ってベストメンバーを送り出した。

Formation1

 

前半、慎重な入りではあったが、決して悪くはない試合運びだった。長谷部が、遠藤とは違った試合の組立をうまく行い、縦への鋭いパスを供給する。前田を楔にして香川が切り込んで放ったシュートは惜しくもバーを叩いた。一方で、イングランドもルーニーが中盤まで下がって気持ちよさそうにプレーをしていた。ポゼッションはわずかにイングランドが上回っていた。
しかし、前半30分、予想だにしなかったアクシデントが起きた。前田がジョレオン・レスコットとの競り合いで倒れこんだ際、脳しんとうを起こして交代を余儀なくされたのである。

 

ザッケローニは頭を抱えていた。

絶対に勝たなくてはいけない試合。前田の欠場によって、ファーストDFかつポストプレーができるFWを失った。ハーフナー・マイクを投入する時間ではなく、彼には前田のような2列目を引き出す器量さはない。

3-4-3。

指揮官の頭には、かつて自らが十八番としたフォーメーションが浮かんでいた。前田に代え、栗原を投入し、内田・長友をサイドハーフに上げる。一方で、コンフェデ杯でのメキシコ戦の10分間以来、数度試されたこのシステムが明確に機能した試合はなかった。ましてや、この試合、サイドにボールを散らす遠藤という絶対的存在がいない。

そして、「絶対に負けられない」試合ではなく、「絶対に勝たなくてはいけない」試合だった。

指揮官は、自分の美学を捨て、しかしチャレンジングにも、公式試合では1度も試したことのないメンバーでの布陣を敷いた。前田に代えて、中盤のボランチに中村憲剛を入れ、細貝萌をその下のアンカーに入れたのだ。2010年、岡田武史が阿部勇樹を使ったシステムが、4年の時を経て再びW杯で使われたのである。

そして、ザッケローニは、細貝にルーニーへのマンマークを明確に指示した。

 

formation2

 

これが当たった。中村憲剛中心となった試合の組み立ては試合を落ち着かせ、本田の「タメ」を香川が活かして、あるときは中に切れ込み、あるときはサイドに広がって、水を得た魚のように躍動した。長友の運動量にギアがかかり、幾度と無く香川を追い越す動きでチャンスを演出した。年に1度あるか、という周囲を驚かせるワールドクラスのパフォーマンスだった。

本田と香川が共存し、それぞれの選手の役割がクリアにプレーすることが出来た日本は、前半30分以降の時間帯を圧倒的に自分たちのものとし、シュートを重ねていく。ハートの好セーブもあり、前半スコアレスドローに終わるものの、自信を持って後半を迎えられる終わり方だった。逆にイングランドは、ルーニーという心臓が細貝のマークによってうまく動けず、攻撃のポンプを失った。チームとして、ルーニーというオールラウンダーに頼っていた構造をザッケローニは見逃さなかった。

ザッケローニは攻める。後半から、2試合終わって明らかに疲労がピークに達していた2戦目の功労者、岡崎を代え、清武弘嗣を投入する。岡崎の右サイドを、中村憲剛が攻め上がる際に、イングランドは明らかに狙っていたが内田が良く抑えていた。チームスタイルは、中村憲剛・香川真司・清武弘嗣という3人を中心とした堅守速攻が明確になる。ラインを高く維持し、ボールを失っても前線、中盤から素早いプレスを行うことで、相手の攻撃の芽を摘むプレーは、まるで欧州のスターダムに駆け上った現代サッカーの象徴、ドルトムントのようであり、オシムが就任して以来目指してきた「走るサッカー」がそこにはあった。そして、そのスタイルの申し子である香川のパートナーになれるのは、この日本代表においては清武弘嗣をおいていなかった。

後半27分、中村から縦のパスを受けた香川が中に切れ込み、清武に託すと、そのまま狭いスペースを走り抜けた香川に清武がワンタッチで柔らかいパスを出した。香川が落ち着いたトラップの後、我慢しきれなかったハートを振り切り、無人のゴールにボールを流し込んだ。

この大会初めて先制した日本は、後半40分、最後の交代カードである栗原勇蔵を岡崎と同じく疲労がピークに達していた本田に代えて、明確に守備を固め、逃げ切った。

日本の2大会連続のグループステージ進出、ベスト16が決まった。

 

 
 
※フィクションです。サッカー素人がテンション上って書きました。

 

 

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