[∈]上場したライフネット生命の黒字化はそう遠くない


 

ライフネット生命保険

「132億円集めたビジネスプラン」で注目される、インターネット専業生命保険会社 ライフネット生命保険が3月15日、東証マザーズに上場(IPO)した。総計:10,773,000株(公募:8,340,000株 / 売出:4,033,000株)、公募価格はブックビルディング方式(※)で1000円〜1200円、吸収金額は下限価格でも100億円を超える大型IPO案件として注目を集めました。

※ブックビルディング方式とは、新株発行の時の値段を決める際に仮条件を投資家に提示して、「その値段で投資家がどれくらい買いたいか」という投資家のニーズを調べた後に新株の価格決定を行なう方法です。

注目の結果から先に書くと、公募価格は下限の1000円に決まり、

初値は公募価格を7%下回る930円、初日終値は990円で取引終了。

となりました。新興企業としては圧倒的に知名度も高く、市場の地合いも好況の中で期待された株価とは、異なる結果となりました。 一方で、市場を生業とする投資家からは「創業以来、赤字続きである」、「上場するには時期尚早」、「公募価格が強気の設定過ぎる」といった声が大きく聞かれ、そうした嫌気がある程度反映された形となっている。 では、本当に、ライフネット生命保険のIPOが「上場するには時期尚早」だったのか、「公募価格が高すぎ」だったのか、 そして「いつになったら黒字になるのよ?」といったことについて、目論見書などを読みながら勝手気ままに考えてみたいと思う。ちょっと遅くなっちゃったけど…

P/Lから見るライフネット生命保険

まず、現状把握として、ライフネット生命保険のP/Lをまじまじと見つめてみよう。 目論見書の形式ばった損益計算書は見にくいので、上場の日に、ライフネット生命保険から出された成長可能性に関する説明資料から拝借。

 

ライフネット損益計算書

注目すべきは、赤枠で囲った
1)経常収益   2)広告宣伝費   3)保険業法第113条繰延額 の3点です。

経常収益

まず、通常企業の売上高にあたる経常収益は、2008年5月の事業許認可後の開業から約4年弱で、単年度30億円以上(2012年3月期通期の予想は経常収益約37.8億円)の数字をたたき出している。正直、恐るべきペースとビジネスモデルである。
その理由は、内訳にある。保険料収入が98%を占めており、毎月毎月、消費者が収める「チャリンチャリン」の継続課金ビジネスであることが分かる。何が凄いか考えてみるには次の質問を考えてみていただけませんか。

”あなたが他社に乗り換えるとき、最も頻度が多そうなのは次のうちどれでしょうか?”

A. 生命保険会社   B. 携帯キャリア   C. ソーシャルゲームSNS

僕なら、 C→B→Aですね。携帯キャリアも今や、MNPで簡単に乗り換えることができます。
厳密に言えば、Cは継続課金ではありませんが、Bの携帯キャリアと並んで現在、日本で最も儲かっているビジネスです。
何が言いたいかといえば、「生命保険料というのは、一度契約をしてしまえば安定的にお金が入ってくるストック型ビジネスであり、そのスイッチングコストは非常に高い」ということ。生命保険会社を変えるためには、1から契約を見直して、保険会社を比較して…といった風に大変です。GREEからMobageにゲームの時間を移す、あるいはDocomo からSoftbankへ乗り換えるといった比ではありません。

これについて、元VCで、「The Start Up」の梅木雄平さんもライフネット生命保険の株が中長期的に「Buy」である理由の1つとしています。
”ライフネット生命保険はなぜこのタイミングで上場したのか?”

ストック型ビジネスの積み上げが伸びているというのは、ビジネスの視点として非常に重要である。

広告宣伝費

ライフネット生命保険のP/Lを見ると、驚くほど広告宣伝費を使っていることが分かる。
2009年3月期: 経常収益2.48億円に対し、広告宣伝費5.24億円
2010年3月期: 経常収益6.58億円に対し、広告宣伝費5.59億円
2011年3月期: 経常収益18.2億円に対し、広告宣伝費12.9億円
2012年3月期第3Qまで: 経常収益26.3億円に対し、広告宣伝費12.9億円

直近決算期である2011年3月期で、売上に対して、その66%を広告宣伝にあてている。
以前の決算期に至っては、売上のほとんど or 売上の2倍の額の広告を投下していることが分かる。

今、日本で最も勢い良く広告を打っているGREEは、2008年(平成20年)の12月に株式公開(IPO)したが、
当時、彼らの直近決算期(2007年6月期)、売上高30億円弱に対して、広告宣伝費は6億円。
GREE
これでも相当攻めている印象でした。

それを上回る金額をライフネット生命は拠出している。
営業人員を持たない代わりに働かなければいけないのは広告たちであり、ネット専業という業態を考えれば当然ではあるが、しかし、この額は異常と言える。逆に言えば、2011年3月期の経常損失は8.2億円だから、12億円の広告宣伝費を4億円以下に抑えれば、すぐにでも単年度黒字を達成できたことが分かる。(後述の保険業法第113条繰延額を考慮に入れない場合。そんな黒字は意味がありませんが。)

しかし、ライフネットは広告投下の手を緩める気はないようで、目論見書のIPOにおける新株発行の手取金用途には以下のように書かれている。

具体的な資金使途としては、ブランド認知度向上及び新商品開発等の成長施策として、2013年3月期、2014年3月期にそれぞれ2,500百万円充当することを予定しております。

広告宣伝費のみとは書いてありませんが、25億円。攻めますね。

保険業法第113条繰延額

莫大な広告宣伝費をかけ、経常収益を遥かに超える費用を拠出できているのも、この保険業法第113条繰延額のおかげといえるでしょう。
この勘定科目が何かと言うと、簡単にいえば「保険という業種を鑑みたときに、事業初期にお金かかっちゃうのはしょうがないよね。ある程度は来年度に費用を繰り越して、後から償却しなよ」ということである。

保険業法第113条

保険会社は、当該保険会社の成立後の最初の5事業年度の事業費に係る金額その他内閣府令で定める金額を、貸借対照表の資産の部に計上することができる。この場合において、当該保険会社は、定款で定めるところにより、当該計上した金額を当該保険会社の成立後10年以内に償却しなければならない。

ライフネット生命のB/Sを見ると、2012年度第3Qまでで、累計の繰延額が、31億8000万円ある。これらは、創業10年目、つまり2018年までに償却しなければいけないので、あと6年余りで5億円の「奨学金」は今後、P/Lの費用に乗っかってくる。しかし、1年間に売上高を2倍、3倍にしているペースがある程度持続すれば、その「奨学金」も返済に困ることはないのではと考えている。

株式公開はロケットの二段階目

ライフネット生命保険の現在の契約保有件数は、上記の通り、10万3875件ですが、副社長、岩瀬大輔さんの「ネットで生保を売ろう!」を読むと、出口社長が、創業初期に契約してくれた人たちへの感謝Dayを開いたとき、「黒字化はいつか?」と尋ねられて、こんなことを語っている。

 

「(契約件数が)15万から20万件に達することが出来れば、
黒字化できると考えています」

−『ネットで生保を売ろう!』(P227)

現在、ライフネット生命は月間4000〜5000件で契約件数を新規に獲得していますので、1年間に5〜6万件の増加が見込まれる。前述の出口社長が創業初期に出した数字をマイルストーンとするのであれば、あと1年〜2年で単年度で黒字化できる目処が立つということだろう。
もちろん、経営戦略上、広告宣伝費や保険業法に基づく繰延額の償却といった費用をどこまでその年度に計上するかで、そのタイミングはずれる可能性はある。ちなみに、ライフネットに出資をした、同じくオンライン専業という手法で業界に風穴を開けた「マネックス証券」も、20億円の売上を引っさげて、2000年に上場しましたが、黒字化したのは2004年だった。

出口社長が前述の数字を出したとき、まだ契約件数は数千件の保有に過ぎなかったという話なのであるから、出口社長・岩瀬副社長はもちろん、ライフネット社員にとって、「ずいぶん遠くまで来たなぁ」と感じるところではないか。

まず、保険業という会社を営むには、大規模な初期投資(保険金の資金拠出力)が必要になる。創業時に集めた異例の132億円という投資ロケットによってライフネット生命保険はスタートした。さらに、ライフネット生命が更に上に行くには、より高い勢いでの契約獲得をする意味でも、ソルベンシー・マージン(支払い余力)を増す意味でも、二段階目のロケットが必要であり、そのためにこのタイミングでのIPOとなったのではないだろうか。

強い宣伝力(営業力)→契約獲得→収益の拡大+支払い余力の拡充→強い宣伝力…というサイクルを回していけば、保険業種に最も必要な

「信頼」というブランド構築

という無形価値が形成できる。
そもそも、条件が同じである保険商品は、価格以外に本質的な差別化はできない。消費者にいかにその好感を持ってもらい、信頼されるかが商品選択に取って重要です。それをライフネット生命保険のマーケティングは、純粋に重視していると言える。

IPOをするときに、東京証券取引所にて5回、金の鐘を鳴らすことができる。通常は、創業メンバーや創業当時から事業を支えた投資家が鐘を鳴らすのですが、ライフネット生命は契約者の代表と共に鐘を鳴らしたそうです。何とも素敵な演出ではありませんか。

totodaisuke Twitter

戦後初の独立系生命保険会社、ライフネット生命は応援したくなる会社だなと思う。長文になってしまいましたが、僕自身がファンであるため、エントリを1つ書きました。「応援したくなる」というファンがしっかりとこの会社を支えていれば、きちんと利益が出せるようになるまで、そう長く時間はかからないと思う! 頑張れ!ライフネット!

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