[∈]Welq問題から見るDeNAのM&A力不足


DeNA、医療情報提供のモラルや著作権侵害の可能性は至るところで語られているけれど、M&Aコンサルティングに携わっていた身としては、完全なるPMIの失敗に見える。

よくM&Aの世界では、買収後の事業運営の方向性として、「求心力」と「遠心力」という言葉が使われる。

  • 「求心力」は、被買収会社を買収会社のルールに取り込むことで、シナジーを利かせやすいが、ベンチャー企業等だと特に、企業文化の違いから、被買収企業の人材離反リスクがある。
  • 「遠心力」は、被買収会社の経営の独立性を許容したり、被買収会社の経営者に事業運営を一任することで、企業風土や事業の勢いを削がないメリットがあるが、一方でデューデリジェンスでは見つけきれなかったリスクが台頭したり、実態のガバナンスが効かなかったりする。

DeNAは完全に「遠心力」のマネジメントに失敗した。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/120700510/

リンク先のインタビューで、公開を当初維持したMERYについて、
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-記事の8割が削除されたということは、MERYにも、リライトや画像の無断利用など、問題があったという認識なのでしょうか?

守安:記事内容について完全に白だと言えないもの、少しでもグレーが疑われるものは、念のため、大胆に削除した、と聞いています。どういう基準なのかは、現場が混乱しながらやっているので、正直、把握できていません。
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と守安さんが語っているが、そもそも9サイトを閉じて、「MERYは大丈夫」と話されていた時点から一貫して、ペロリ社の正確な情報をトップが掴めていないというガバナンス上の問題があるように感じる。

トップが実態や基準を握らないまま、事業収益を直接生み出す8割のリソースを消す等、通常はありえない。

「~と聞いています」「詳細は第三者委員会で検証を…」と言っていることは、自分は買収した会社に対して、健全なコーポレート・ガバナンスを効かせられていませんでしたと白状していることと同義だ。なぜここまで有事になってもなお、現場の一次情報をトップ自らが取得しに行こうとしないのか、もはや不思議のレベルである。

2014年の買収時点で、法務的なデューデリジェンスの中でグレーゾーンを認識しながらも、2年間、放置どころかグレーのインパクトを加速させたことと併せ、M&Aにおける統合作業のごくごく初歩的な部分を怠っていたということ。

サイト閉鎖=事業の売上停止なので、復活できる時期にもよるが、P/L状況によっては、記者会見で公開された「iemo社 7.9億円、Find Travel社 1.3億円、ペロリ社 26.5億円」の、のれん減損(特損)を迫られる可能性がある。減損テストをクリアできるか心配。

横浜ベイスターズ買収に前後して、DeNAは、営業利益をのれんの定期償却で傷つけなくて良いIFRS会計に移行しているが、こうした突然の減損リスクがあるのがIFRS会計の怖さだなと今回改めて思う。

守安さん自身、「SEOが好き」と話しており、確かにペロリやiemoは素晴らしいノウハウがあったと思う。一方で、M&Aはよく結婚に例えられるが、相手の良い面ばかり見て、悪い部分を見ないようにするばかりでは、いずれ破綻のときが来る。

DeNAも横浜ベイスターズの買収とその後の球団経営では、素晴らしい(積年の893案件であった横浜スタジアムの買収は本当に凄いと思う)手腕を発揮しているし、今回1つのケーススタディに過ぎないが、少なくとも日本を代表する企業でもこうしたことが起きることを鑑みると、改めて前職のM&Aコンサルティングという領域は、まだまだこの日本において価値のある知識産業ではないかと感じた。

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