[∈]【書評】平成三十年


 

著者は、堺屋太一。言わずと知れた、元経済企画庁長官であり、大阪万博の企画実施、上海万博では準備室高級顧問を務めたプロデューサーである。

本小説は、朝日新聞に平成9年年6月から平成10年7月まで連載された未来予測小説である。上巻に「何もしなかった日本」という副題が付いており、以下のような設定で、平成30年(2018年)の日本が描かれる。

 

■ 超円安が進み、1ドル=230円の時代となる。輸出企業の苦境と同時に政府には300円へ円安誘導策も検討される。
■ 平均物価は平成10年の3倍に上昇、ガソリンは1L 1000円と高騰する。
■ 貿易とサービスの収支は1000億ドルに近い赤字で、日本は三つ子の赤字に苦しむ。消費税は20%へ。
※三つ子の赤字とは、財政赤字、家計部門赤字、経常収支赤字のことである。

こういった条件の下で、主人公である木下和夫という産業情報省(総務省に近いイメージ)の官僚が、
実業家出身の織田信介という政治家に重用されて、彼の政治改革の一端を担うという物語。
小説なので、実際にネタバレ部分は書けません。

あらすじ までを紹介するのもそこそこに、こういう未来予測型小説は、答え合わせが楽しい。

現在は、平成24年3月15日だが、著者が平成9年に予測した未来は結構現実のものとなりそうな予感がする。

 

*超円安が進む

→ご存知のとおり、1ドル80円前後の超円高が続いている。為替の仕組みを正しく理解するには、『弱い日本の強い円』(佐々木融 著)という名著を読んでみてほしいが、一方で、日本の財政収支において、現在、国債の90%以上を支えている国内での貯蓄が尽きたときには、 ハイパーインフレが起こり、物価の連動と共に超円安が進行する可能性は大いにありうるシナリオではないかと、勝手に(※ここ大事)思っている。

*平均物価の上昇とガソリンの暴騰

→前述の国債発行によって、財政を国内で吸収することが出来なくなることを考えると、必然的に量的緩和は進むので、物価は少なからず上がるのではないかと思われる。まぁ、分かんないですけど(←)

→原子力発電所の見直しが世界的に進む中、同時に石油への争奪戦はますます進んでいくはずで、さらに中東の政治的リスクは常に不安定要素である。現にイランのウラン濃縮をめぐる問題で、原油は高騰しているし、数字だけ見ても2000年から10年ちょっとで1バレル=100ドルを超すピークを切り取れば、5倍になっている。
[世] 原油価格(WTI)の推移(年次:1980~2011年)

経常収支

*三つ子の赤字が進む

→こちらも、考えられるが、あと6年で経常収支と家計部門まで赤字になるとは思えない。ただ、原子力発電事故に伴う、エネルギー行政の見直しに伴う資源輸入増+輸出企業の海外移転で2011年の貿易収支は赤字になったという事実は経済界に大きなインパクトを与えたニュースだった。

右は、時事通信社から拝借してきた貿易収支+所得収支そして経常収支の経年グラフだが、
それまで、平均して15兆円ぐらいはあった経常収支が、2011年の特殊事情を加味しても、
2/3の、10兆円割れになっているというの は憂慮すべきニュースかなと思う。

消費税に関しては、2015年までに10%というのが最近の話題であることを鑑みると、
2018年に20%ということはなさそうだが、財政と国内消化国債の持ちこたえ次第かなという気がする。

 

さて、 本書の楽しみは、さらに2つあって、1つは、

”色々なビジネスが描かれること”

本書で主役と言ってもいい織田信介という改革派の政治家は実業家出身で、「パソエン」というハードで遊ぶ「オワリコン」というバーチャル遊宴ソフトで財を成す設定になっている。簡単に言えば、Wii とキネクトと演舞を合わせこんだみたいなシステムなのだが、それが色んなBlogを読むと、「うはw オワリコンww ネーミングセンスwww & ビジネスセンスwwww」みたいな草wがたくさん生えていそうな意見が多くあった。

ただ、1つ言えるのは、堺屋太一は執筆当時の1998年時点で、既に63歳とかです。
63歳のおっさんがWiiとキネクト混ぜ込んでいるものを想像で描ききっているの、普通にスゴイと思いませんか?
僕の親父は、今年で還暦ですが、未だに スマートフォンはおろか、i-modeすらほとんど使いません。

 

さて、これが本書の隠れたテーマでもあると思うのですが、もう1つの楽しみ方として、

”官僚組織の人事と意思決定に対する考え方を学ぶ”

ということが挙げられるのではないかと思う。さすがは、元官僚。
それぞれの官僚ポストから生まれる思惑を交差させるところは、なかなか迫力がある。

官僚組織とは、ある意味成熟しすぎた世界であり、それをぶち壊そうとする政治家への権力闘争 は、
ストーリーの中心テーマと 言っていいだろう。

残念だったのは、登場人物の名前をあえて、織田、明智、柴田、足立、石田、そして木下など武将をもじった名前にしているところ。
別に普通の名前設定で良かったのでは、と最後まで読んで思いました。

 

最後は、意外な結末もあり、ブックオフで100円で売っていたりするので、ちょっとした経済小説が読みたい時に、どうぞ。

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