[∈]【書評】ブルー・オーシャン戦略


 

著者は、W・チャン・キムレネ・モボルニュ
ふたりともINSEADの教授である(レネは客員教授)。

本書をきっかけにINSEADには ”Blue Ocean Strategy Institute” なる機関までできたそうだ。HPを見る限り、ブルーオーシャンを生み出した企業のケーススタディを今でも追ってるというところか。
Institute Mission にはこんなことが書いてある。

この機関は、理論と実践はお互いの利のために、互いに刺激しあい、豊かにし、そして教えあうという信念のもとに成り立っています。
本機関は以下の目的を持っています。

・ブルーオーシャン戦略における学問的、経営的研究を先導することによって、経営戦略分野での学問的および科学的な貢献を成すこと。
・研究成果の実践的適用によって企業、政府、NPOのパフォーマンスや方法に貢献をすること。

さて、本書の要約は、以下のようなことだ。

・レッド・オーシャンは今日の産業すべてを表す。つまり既知の市場空間である。かたやブルー・オーシャンとは、今は未だ生まれ得ていない市場、未知の市場空間すべてをさす。レッド・オーシャンでは、(中略)各社ともライバルをしのいで、限られたパイのうちできるだけ多くを奪い取ろうとする。競争相手が増えるに連れて利益や成長の見通しは厳しくなっていく。(中略)対照的に、ブルー・オーシャンは市場として未開拓であるため、企業は新たに需要を掘り起こそうとする。利益の伸びにもおおいいに期待が持てる。(P20)

・バリュー・イノベーションこそ、ブルー・オーシャン戦略の土台をなしている。「バリュー・イノベーション」という呼称を用いたのは、ライバル起業を打ち負かそうとするのではなく、むしろ、買い手や自社にとっての価値を大幅に高め、競争のない未知の市場空間を開拓することによって競争を無意味にするからだ(P31)。

・(ブルー・オーシャンを創造するため)4つのアクションという手法を編みだした。「取り除く」「減らす」「増やす」「付け加える」である。(P51)

・ブルー・オーシャンを創造する6つのパスは、
1.代替産業に学ぶ
2.業界内の他の戦略グループから学ぶ
3.買い手グループに目を向ける
4.補完財や補完サービスを見渡す
5.機能志向と感性志向を切り替える
6.将来を見通す

に従って、戦略策定プロセスを組み立てていくべきだ。(第3章)

本書の優れているところは、要約に書かれていないところで2点ある。
本戦略は言うのは簡単だ。そして、そのキャッチーな名前から、今やちょっと勉強した大学生だってブルー・オーシャン戦略がどういう戦略かということぐらいは話すことができる。

ただ、重要なのは、辞書的に意味を述べることではない。

本書の優れている点として、まず社内の事業をどうすれば、未開拓の地つまりブルー・オーシャンへとドライブできるかということについて第7章、第8章で書かれている点だと思う。どの経営者だって、新しい事業で他社に先駆けて進出し、参入障壁を築きたい。
しかし、社内の調整に伴う新規事業の遅れによって、参加したときには既にレッド・オーシャンであった、というケースは多々あるだろう。
経営戦略は、例えば、”Innovator’s Dilemma”がそうであるように、結論は”One Phrase”だ。ただ、戦略だけでは会社は動かない。俗っぽく言えば、それをどう「運用」に活かしていくんだということが肝だ。その意味で、本書を改めて読む価値は大いにある。

2点目として、戦略Mapを始めとした、著者の図示の上手さだ。これはビジネスでPPTスライドなどを作るときに大いに参考になった。
新しいコンセプトを提案する中で、それに対する変数がいくつもある場合でも、著者は必ず章の最初や最後に「まとめ」の表なり、Five Forcesの図なりを描く。研究論文からビジネス文書にまで広く使える表現方法を学び取ることができると思う。

僕が所属している会社もこの戦略のもとに、動いている。
市場を物理的に変えるわけでもなく、競争戦略を描くわけでもなく、新たな「海」という価値創造の仕方を提示した本書は、(よく言われることだが)、ドラッカーの「企業の目的は、顧客の創造である」という価値観をベースにしていると僕は感じている。
経営の神様の視点をよりプラグマティックに落とし込んだ、ビジネスの基本である気がする。

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