[∈]【書評】イシューからはじめよ


 

著者は、マッキンゼー→イェール大学 脳神経科学Ph.D →ヤフーCOO室室長というなんとまあ変わった経歴の安宅和人氏。
本書は、彼のブログがきっかけで発刊されたらしい。

本書のメッセージはシンプルである。
それは、「イシュー度の高い仕事だけを見極めて、それに対する解の質を上げ、バリューのある仕事をせよ。」 ということである。

本書から引用した図で見るのが分かりやすい。

 

犬の道(P32 )

筆者は、バリューのある仕事の定義を、イシュー度の高い問題に対して質の高い解を出すこととしている。
その上で、イシュー度と解の質を以下のとおりに表現している。

「イシュー度」とは、「自分の置かれた局面でこの問題に答えろだす必要性の高さ」、そして「解の質」とは、「そのイシューに対してどこまで明確に答えを出せているかの度合い」となる。(P26)

そして、解の質を高めようと、がむしゃらに働き、量をこなすやり方を筆者は「犬の道」(なぜ犬なのかは謎)と名づけて、それを避けるために、まずはイシューの見極めからはじめなさいというアドバイスを送っているのである。

確かに、提案などをする一連の動作の中で調査や議論をするが、50−60%は後から振り返ると無駄だったというケースが、大学でのグループワークではしょっちゅうだった。学生は特に、時間があるし、あんまり頭を使わないからそうなりやすい。
しかし、量質転化的な考えではダメなのだと改めて学ぶことができる良書だ。

つまりイシューの見極めが必要なのだが、それには3つの評価軸を与えている。
良いイシューの条件とは、筆者に言わせれば、

1. 本質的な選択肢である
2. 深い仮説がある
3. 答えを出せる

さらりと書いてあるが、これはかなり難しい。特に1と2に関して、まずこの問題が=答えを出す必要があるという認定をするまでに人間は、色んな方向にそれてしまう。ようやく決定した問題も答えを出せない問題である可能性も高い。そうしたらまた振り出しか、時間が迫る場合、中途半端な仮説の解しか出せなくなる。

おそらくプロジェクトを進める経験をすればするほど、これが痛いほどできないことが分かる。
しかし、「こんなことが出来れば、苦労しないよ」「あいつが言うこと聞かないから腰を折られている」といったように考えないためにも本書は処方箋となってくれる。具体的な仮説ドリブンなども、きちんとフレームワーク化されていて、見直し見直しでプロジェクトの確認を本書を通じて行なっていけるだろう。

マネックス証券の内藤忍さんのブログでも書かれているように、

しかし、この本は読み手を選ぶ本であることも事実です。

まず、内容が極めて濃く、さりげない表現の中に重要な示唆がたくさん含まれているため、本質をつかむのには、それなりの経験が必要だと思います。イシューをまず見つけろ、というメッセージが伝わっても実際にそれを実践できる人は、残念ながらそれほど多くはありません。高度で難しい作業なのです。

僕もまさにそう感じた。何回も繰り返して練習を積まないと、この方法に辿りつけない。それは、一緒にプロジェクトをする人間や、社内政治の悪く言えば妨害、よく言えば共同作業によって左右されるし、そもそもどうしても人間は、WHATを決め打ちして、すぐHOWに走ってしまいがちだ。最初は、時間を大切にする感覚だけでも研ぎ澄ましていきたい。

筆者は、何度もノーベル賞受賞者である利根川進氏の言葉を引用している。序章の前に書かれたこの言葉が印象的だった。

一人の科学者の一生の研究時間なんてごく限られている。研究テーマなんてごまんとある。ちょっと面白いなという程度でテーマを選んでいたら、本当に大切な事をやる隙がないうちに一生が終わってしまうんですよ。ー利根川進

人生は何かを成し遂げるにはあまりにも短い。表紙に書かれた言葉、うーん、その通りだ。

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