[∈]『科学技術と企業家の精神』要約


 

「学部生時代の勉強を遺そう」第20弾。

 

【要約】

社会発展の原動力は、イデオロギーではなく、テクノロジーである。科学者と技術者は、自然発生的に好奇心と探求心が芽生え、とんでもない発見と発明をしてしまうことがある。そして、それが生活習慣と商習慣を変え、制度と法律を根本的に変える。そういった社会の部分的変化をもたらす、一連のとんでもない発見と発明が技術革新である。それに強い好奇心を持ち、社会の仕組みを理解し、財務能力を持って科学技術のアイデアをビジネスに転換する企業家が、新たな産業を興すことで、もたらされる社会の構造変化が産業革命である。

産業革命をひもとくと、イギリスで起こった「動力革命」、その後のドイツやアメリカで起こった「重化学工業革命」、そして20世紀最大の発明でもあるインターネットをはじめとした「デジタル情報革命」の3段階に分類できる。動力革命は、人間の体力を超えた「動かす力」を提供した。重化学工業革命は、物質の変化を人工的に創り出し、新たな材料や力を提供する手段を提供した。これらは、すべて物理現象や化学反応の応用であったが、デジタル情報革命はそれらとは関係なく、情報そのものを作り出し伝達するものである。そこには数理科学的な思考が必要であり、これまで考えなかった新たな可能性が拓ける。

数理科学は、非決定論的な学問に科学への構造変化をもたらした。産業革命によって科学と技術は融合し、さらにインターネットは、産業革命以降「科学」と表裏一体となったあらゆる「技術」に対して、その技術によって社会がどういう影響を受けているかを計測する手段を提供しつつある。つまり、インターネットは技術に対して社会的センサーネットワークを提供したのだ。

デジタル情報革命によって、流通機構の合理化、つまり中抜きが起こり、生産者主導から消費者主導へ、「供給者側の論理」から「需要者側の論理」への移行が進む。それによって、通信分野を起点に、全産業の構造が大きく変化しつつある。デジタル情報革命に続く新産業革命は、筆者の予測では、「環境エネルギー革命」である。産業革命を予測する際に、一つに科学技術上の発見・発明という偶然性と、もう一つにダウンサイジング・テクノロジーという2点を考えることが重要である。

国家の経済力は科学技術力であり、経済政策が効力を発揮する前提である。これからの世界において、無資源国家日本が目指すべきは「科学技術創造立国による強小国」であり、「質の経済」の重視である。そのために、日本がまずすべきことは、社会の拝金主義(金融中心主義)と企業経営の業績至上主義を改め、科学技術をはじめとする学問的知的好奇心と創造性を尊重する「価値観」を再構築することである。その上で、初等中等教育改革、大学・大学院の高等教育改革、科学技術振興政策、少子高齢化時代の高度知的人材の移民政策といった問題設定力を持った創造的人材のための改革が必要になるだろう。

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