[∈]『企業・市場・法』要約


 

「学部生時代の勉強を遺そう」シリーズ第7弾。

Coase, Ronald H., “THE FIRM, THE MARKET, AND THE LAW,” The University of Chicago, 1988.(邦訳:宮澤健一・後藤晃・藤垣芳文、『企業・市場・法』、東洋経済新報社、1992年.)

 

本書(本章)は、「企業」というものの、現実的かつ、経済分析における分析道具である限界と代替の概念によって取り扱うことができる、定義を得ようとする。それにあたって、まずは経済システムを考えるところから始めたい。

通常、経済学者が取り扱っているような形では、経済システムは「ひとりでに機能している」とみなし、想定として資源配分が価格メカニズムに直接依存していると考えられている。しかし、現実はそうではなく、経済システムのなかにも「経済計画」に類似したものは存在している。とはいえ、調整が価格メカニズムによってなされると論じられている事実からみて、なぜ、「組織」が存在するのかという疑問が発せられる。
企業の特質は、価格メカニズムを代替することにある。本章の目的は、資源は価格メカニズムによって配分されるという仮説と、配分は調整者である企業家に依存してなされるという仮説のギャップを埋めることにある。

そこで、さきほどの問いに立ち返ると、専門化された交換経済における企業を設立することの主要な理由として、価格メカニズムを利用するための費用を、資源の監督を企業家が担うことによって、低減できるということにあるだろう。他に、注意すべき要因としては、政府その他の規制当局によって、企業内で組織される取引は市場の交換取引とは違い、規制がかからないという、政策手段があるが、やはり、企業の誕生は主として市場利用の費用が存在することによる。では、もし組織化が費用を低減させることができるなら、なぜ市場取引が存在し、なぜすべての生産が巨大な一企業によって行われないのであろうか。
その理由として、第一に企業の規模が大きくなるにつれ、企業家の機能に収穫逓減が働く点、第二に、企業内に組織化される取引の増加に伴い、企業家は生産要素の価値の最大化に失敗しやすくなる点、最後に、小企業が有する「その他の優位性」が大きいため生産要素の供給価格が上昇するかもしれない点が挙げられる。ポイントとしては、企業の拡張が進められるのは、追加的な取引を自らの企業内に組織化するための費用が、その同じ取引を公開市場で交換という手段で実行するための費用、もしくは他の企業の中に組織化される際に費用、と等しくなるところまでである。企業の拡大は、空間的な組織化の費用を減少させる発明や、経営管理の技術を改善させる変化があったさいに起こる傾向がある。

ナイトの指摘する不確実性は、人々が将来の欲求を予測せねばならないことを意味し、そしてその予測という仕事において、新しい経済的機能者、企業家を生む。企業の規模を確定するために検討すべきは、市場利用の費用と他の企業家による組織化の費用である。企業がどの程度の規模になりうるかを検討した際、限界主義の原理はスムーズに動く。問題は常に次にある。さらなる追加的な交換取引を、組織のオーソリティの下に置くことは利益となるだろうかという点だ。本書の定義が現実的で、扱いやすいものであるかは明らかだろう。

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