[∈]『Linuxはいかにしてビジネスになったか―コミュニティ・アライアンス戦略』


 

 

「学部生時代の勉強を遺そう」シリーズ第4弾。

 

本書は、無償の「Linux」がどのようにビジネスと結びつき、リナックス企業はどのように成功を収めたのか?という問いから、そこで鍵となった「コミュニティ・アライアンス」という新しいビジネスモデルを考察しつつ、奥にあるネットワーク社会の未来を展望する。

リナックスの成功の秘訣はリナックス・コミュニティによる開発モデルの優位性と、普及のためにビジネス・プレイヤーを活用するという戦略を組み合わせたことにある。リナックスにおけるコミュニティとビジネスのこうした相互依存関係こそ、「コミュニティ・アライアンス」という新たなビジネスモデルである。

情報が価値を持つのは、提供された情報に対して情報を受け取った人が別の情報と関連付けることによって、解釈を与えられたときであり、その価値を「編集価値」と呼ぶ。企業が「動的不確実性」に対処するためには、この編集価値の活用が鍵である。企業が編集価値を生み出す、「知性」を持つネットワーク・コミュニティとかかわる戦略モデルは以下の3つに分類される。1つ目が独立戦略。編集価値を交換し、国民通貨と並存する地域通貨である「LETS」が代表例だが、編集価値を経済価値へ変換できないため、企業に馴染まない。2つ目がコミュニティ・ビジネス戦略。コミュニティで生まれた編集価値を経済価値へ変換するシェアウェアが代表例だが、価値に対する対価の支払いが確立せず、変換の際に大きなロスが生じるため、一定の固定費負担額を持つ企業には採用しにくい。最後が、本書のテーマである、コミュニティ・アライアンス戦略である。リナックス企業の例から分かる通り、企業がネットワーク・コミュニティの生む編集価値を自社事業に活用しながらも、ネットワーク・コミュニティとの関係はサポート役に徹し、そこで生まれた編集価値を経済価値に変換すること(=バリュー・コンパイリング)に注力する戦略である。ここでの収益モデルは、情報を運ぶメディアの希少性に対価を求める「直接メディアモデル」と情報からダイナミックに生まれる価値に対価を求める「編集価値モデル」の複合型(=バリュー・コンパイリングモデル)である。このモデルに必要なのは、編集価値を最大にするコミュニティ・リーダーと編集価値を経済価値に変換する企業が別個に存在し、企業はネットワーク・コミュニティに対して「聞き上手」となることである。企業はこのコミュニティ・アライアンス戦略を早期に取り入れるべきだ。課題として、ネットワーク・コミュニティにおける編集価値の安定的な産出、「サスナビリティ」があるが、それは企業のマネジメントと同等のものであり、コミュニティのマネジメントと企業のコンディショニングがあれば克服できる。

これからは、多様なコンテキストから生まれる編集価値こそが経済の活力になるという前提でネットワーク経済社会をデザインすることが大切であり、ネットワーク経済社会では、情報という資源が繁茂し編集価値の重要性が高まる。経済価値という、これまで支配的であった価値の優位性を持つ企業が、ネットワーク・コミュニティの持つ魅力と危うさを引き受けながら編集価値を社会につなぐ、つまり編集価値を循環させ、効率的配分を可能にするという重要な役割を果たさなければいけない。そのために、「コミュニティ・アライアンス戦略」を採用し、バリュー・コンパイリングを実践することが企業に求められている。

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