[∈]【書評】「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト


 

人材業界では著名な酒井穣(@joesakai)さんの本。NED-WLT というブログも有名。仕事をご一緒させていただいたことがありますが、とにかく情報のストックが凄い。

さて、本書のテーマでもある人材育成ですが、まず第1章の終わりにこんなことが書かれている。

企業における人材育成の目的は企業理念の浸透にこそある

これは僕の認識と異なるのですが、それはまだおそらく僕に企業勤務の経験が不足しているからかもしれません。
(ちなみに僕は、企業における人材育成の目的は、人材の成長がもたらす企業への貢献だと思っています。)

本書は、具体的な人材育成のポイントを二軸四象限などの図を使って詳しく解説してあり、グラフ等が描けない(というか面倒で描かない)本ブログでは、なかなか紹介しづらいのですが、その章立てだけでも学ぶべき点がある。

第1章 何のために育てるのか(人材育成の目的)
第2章 誰を育てるのか(育成ターゲットの選定)
第3章 いつ育てるのか(タイミングを外さない育成)
第4章 どうやって育てるのか(育成プログラムの設計思想)
第5章 誰が育てるのか(人材育成の責任)
第6章 教育効果をどのように測定するか
第7章 育成プログラムの具体例

これは、一連のビジネスの行動と同じにも見える。

まず、企業の目的があり、誰をターゲットとし、いつ市場に参入し、どうやって売上を伸ばすのか、組織の中で事業の責任をどう設定し、打ち手に対する効果をどう測定していくのか、といったように、「育てるのか」の部分を変えるだけで、1つの経営戦略本になりそうである。

目的、戦略、戦術といったように落としこんでいく本書は、人材育成を極めて科学的に考えたものである。
自分の少ない人生経験から引っ張り出せば、新卒の就職説明会等で、日本企業と外資企業に明確な違いの1つが、この人材育成に対する説明。

日本企業の説明は、たいてい「OJT」「ジョブローテーション」という2つの言葉でだいたい片付けられる。つまり、現場に任せるというスタンスで、「人材を育成」するというよりは、「人材が育つ」という表現のほうが適切かもしれない。筆者は、OJTのことを「放置」と表現する。

一方で、外資企業は必ず自身のキャリアパスをイメージできるように、入社何年目にはこのレベルといったスライドを見せる。例えば、P&Gのマーケティング職のスライドには、〇〇年目〜 ブランドマネージャーといったキャリアの遷移図がある。

部門別採用を行う外資と、総合職採用の日本企業、企業にとってどちらが一概にパフォーマンスが良いか悪いかとは言えない。
ジョブローテーションで会社の色々な部署を経験させることで、様々な社内調整を覚える日本企業は、企業理念の浸透の考えが強く、「就社」のイメージがある。外資は、まずマーケティングという職があって、そこには会社が用意するキャリアパスがあるという意味で、自発的に育つ、または意識的に育成される考えが強いかもしれない。つまり、「就職」のイメージ。(あくまで僕のイメージです)

冒頭から、Amazonのリンクに飛べるが、そのレビューは興味深い。

この本は、従業員は「開発される」べき資源なのだというスタンスに貫らぬかれている。
もちろん、人材開発についての本だから当たり前なのだろうけれど..(中略)
これほど「育てられる側の人」の視点を徹底的に無視した「人材本」もめずらしい。 だから、読んでいてうすら寒くなった。

日本人は、まだ意識的に「育成する」こと、「育成される」ことに慣れていない人も多いのだろう。
このレビューの意見がすーっと頭に入る。

投げっぱなしのOJTではなく、 仕事の出来るできない、やる気の有無で人材の区分し、 それぞれに適した育成アプローチを行う。 (中略)
しかしながら、本著には重要な具体的なアプローチ、 それは対人関係において、どう学びのスパイラルに持ち込むか、
または本著のようなテンションについていけない、 そこそこ幸せ論者の社員にどうするか、が触れられていない。
実はそこが肝であり、そこをみんな悩んでいるのではないか。 評価方法、分析方法よりも、もっとべたでローカルな部分、 それがないことには真実味がない。

酒井穣さんは今それに取り組むために、日本に帰って事業会社で働いている。

最後に引用するのは、痛烈なメッセージ。

「どんな能力を鍛えれば、この会社で認められる存在になれるのですか?」
若手の人材にそう聞かれて、即答できるものが準備出来ていない会社は、長期的にはその地位を弱めていくことになります。(P107)

 

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